西加奈子『サラバ!』(※ネタバレ注意)


直木賞で話題の西加奈子さんの『サラバ!』を読みました。30代の主人公が子ども時代から回想していくというストーリーです。10代~20代は順調な人生を送っていたように見えた主人公でも、年を重ねるにつれて主人公は落ちぶれていき、次第に孤独になっていきます。それは自分のせいではない、家族や周りの人達のせいだとしてしまう主人公に、ある登場人物が次のように言ったシーンが印象的でした。

★引用★

【「あなたも、信じるものを見つけなさい。あなただけが信じられるものを。他の誰かと比べてはだめ。もちろん私とも、家族とも、友達ともよ。あなたはあなたなの。あなたは、あなたでしかないのよ。」・・(省略)・・「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」引用終わり】

 




 

どうして、私たちは他の誰かと比べて嘆いたり妬んだりしまうのでしょうか。それが自分の人生を貧しくしてしまうのにもかかわらず。

 

誰もが主人公のようになってしまう可能性があります。「自分の信じるものを自分で見つけられるか」テストには出ませんけれど、生きていく上で重要なテーマですね。

 

そして、これからの混迷の時代には、『サラバ!』のような文学を読むことで前向きに人生を歩んでいけるのかもしれません。人生に正解などない時代がいままさに近づいて来ているのですから。

 

 

★引用★

【ここに書かれている出来事のいくつかは嘘だし、もしかしたらすべてが嘘かもしれない。登場する人物の幾人かは創作だし、すべての人が存在しないのかもしれない。僕には姉などいなくって、僕の両親は離婚しておらず、そもそも僕は、男でもないかもしれない。 あなたは、あなたの信じるものを見つけてほしい。そしてこの物語に、信じるものを見つけることが出来なかったのであれば、他の物語を読んでほしい。この世界には、数え切れないほどの素晴らしい物語が存在している。何を信じるのかは、いつだって、あなたに委ねられているのだ。