弱さの思想


ポッドキャストでラジオが聞けるので、移動時間とかによく聞いています。

 

好きな番組は『ラジオ版 学問のすすめ』です。

 

本の著者をゲストに迎えて、お話を伺うというスタイルの番組です。

面白かったのは、『弱さの思想』を書いた髙橋源一郎さんと辻信一さんの回です。

 

その中でも、弱者を支える施設を見てきて気付いたこととして高橋源一郎さんが次のようなことを言っていました。

~引用~

●この社会のシステムは全部マニュアルで動かす。そうしないと効率が悪いから。それが現場では全く機能しない。・・・何が一番いいかを現場で考える。そういう組織を自立的につくっていったら、今まで効率的だと言われてつくられた組織よりも、はるかに効率的だった・・・効率的だといってつくっていた組織よりも、全く非効率でつくった組織の方が、はるかにお金もかからなく、彼らにとってもいい。・・・効率的なシステムを非効率に変えていくのではなくて、本当に効率的なのは何かと考えていくと、実は現場で弱者のそばに立って作るものの方が効率的だった。●

この話を聞いて塾でもそうだなと思いました。

 

マニュアルでやってる塾が多いと思いますけど、これって子どもを勉強させるために本当に効率的なシステムなのでしょうか。

 

マニュアルで講師・スタッフは縛られながら働いています。あれはやっちゃダメ・これはやっていいという具合に線引きがされます。そうすると、実際に生徒をみて、「こうした方がいいんじゃないか」という気付きがあっても、実行できなくなりますよね。

 

本来だったら、各人が気付いたことを個別にやった方が効率的でしょう。だから、いちいちあれこれ口出ししない方がいいと思うんですよ。

 

以前務めていた大手塾も、講師の貸し借りを教室同士でするんですけど、うちの所属講師が「あっちの教室は、アレコレ指示が多くて」と嘆いていたことがありました。

 

「マニュアル・オレの指示通りにだけやってくれればそれでいいから」

 

この呪いの言葉をかけられ続けたら、生命力は次第に衰え、働いていても全く楽しくありません。

 

塾の仕事では生徒一人一人違うわけですから、マニュアル化すること自体に無理があります。しかもそのマニュアルも頭で考えたものであって、たいして根拠のないものが多かったですね。


以前、サラリーマン塾長時代に私の教室で開かれた講師会議で、「生徒が宿題をやらないときにどういう対応すればよいか」というテーマで話し合いをしました。そのとき、ある講師から「先生ががっかりして、ため息をつく」という意見がでました。


これはいいなと思いましたね。信頼関係のある生徒と講師の間なら効果的でしょう。「宿題をやらないことで先生をがっかりさせてしまった。次はやろう。」となりますからね。


しかし、「ため息をつかない」ようにと本部の研修では習っているとのことで、講師会議の後に上司から指摘を受けました。


現場の講師から出た意見の方が、頭で考えただけのマニュアルより効果的ということは結構あると思います。


他にも宿題に関しては「はじめに多めの宿題を提示」「宿題多い!」というリアクションが生徒から出たら「減らしたら、ちゃんとやってくる?」という交渉に持ち込み、「これだけはやって欲しい量をやらせる」という意見も講師から出ました。最初から宿題の適量を提示するのはダメというところはなるほどと思いましたね。

 

要するに「生徒の声に耳を傾けて、よく観察して、自分の頭で考えてやっていいよ、責任は俺が取るから」というマニュアルがあれば十分なんですよ。


 

一見すると非効率なんですけど、働く人がのびのびと働き、モチベーションが高く、その結果生徒も勉強しやすく、成績も上がるという非常に効率的な形はあると思います。これをかまなびでは追求したいと思いますね。


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