ナナメの関係がつくれる居場所が必要だ


今回も教室での話題を。

 

かまなびを立ち上げるときに、お話を伺わせて頂いた小田原さんが船橋で「女性のためのコミュニティースペース」を始めたということで、今日は「居場所」について話題になりました。

 

Casa de Amigas(カサ・デ・アミーガス)

http://casadeamigas.jp/

 

居場所で思い出したのが、秋葉原事件で起きた無差別殺傷事件です。

 

事件を起こした加藤被告は、「思い止まったとしても、もう自分の居場所はどこにもない」と語りました。

 

この事件に詳しい、北海道大学大学院の中島岳志教授は、「この事件は止められた」と言います。

 

以下、第7回親鸞フォーラムより引用。

「事件を起こす2日前に、彼は事件で使った殺傷能力の強いタガーナイフをなぜか福井県まで買いに行きます。彼の当時の住まいは静岡県裾野市ですから、片道4時間以上かかりますし、新幹線を使っているのでお金もかかります。…この店には、親切な女性定員がいるという情報がありました。彼のその後の行動から、この情報を見て行ったことに間違いないと思いました。…彼は、(ネットの掲示板に)こう書きました。「人間と話すのっていいね」。彼は人間と話したかったのです。けれども、自分のなりすましがいることや、そのことに怒っていることをリアルな職場の友人などに話すと、引かれるかもしれない、嫌われるかもしれない、そうしたら職場にいづらくなってしまうと思って、彼は友達にその話ができなかった。利害関係の伴っていない誰かに告げたかった。・・・タテとヨコの関係…利害関係を伴った他者との関係では、なかなか本音で問題を打ち明けることができません。ですから、タテとヨコではないナナメの関係たまに会う人とか、それほど利害関係の伴わない人との関係が重要なのです。…私たちが居場所ということを加藤の問題から考えるときには、ネット以外にもナナメの関係性、そのような共同性を社会の中に積極的につくっていく必要があるのではないかと思うわけです。」

(引用終わり)

 

ここで重要なのが、利害関係のないナナメの関係が「ネットの中にしか」なかなかつくれなくなってきているということですよね。

 

 そのネットはというと、意外と脆かったりします。秋葉原事件のように「なりすまし」被害にあうことの他にも、「ネットワークビジネスの勧誘だったり」、「宗教の勧誘だったり」、「性犯罪に巻き込まれたり」などなど、利害関係がなさそうに近づいてくる輩が必ずいるからです。

 

 

とはいえ、ネット以外でリアルなナナメの関係をつくれる場所って、現実的にはなかなか難しいと思うんですよ。だって金にならないので誰もやろうとしませんから。誰かが身銭を切ってやるしかない。

 

しかも怖いのは、誰も身銭を切ってやらなくなってしまうと、秋葉原事件のような取り返しのつかないことだって起こりうる。

 

そうなったときのトータルで考えると、身銭を切ってやるだけの価値が本当はあるはずなんです。

 

これを行政にやらせるというのでは足りないでしょう。行政が作る居場所って敷居が高いからです。ふらっと寄れない。

 

事件を起こした加藤が事件前に寄った店のような「ふらっと入れる居場所」が必要だということです。

 

そう考えると、チェーン店・大型店舗などがやたらと増えてくるのって実は問題かもしれません。そういうところはどうも働き方がマニュアルっぽいことが多いからです。

 

先日もファミレスに行ったのですが、「ごゆっくりどうぞ」って形だけで言っておいて、「早く帰れよ。」みたいな雰囲気の店がありました。言葉に出さなくても、身体から出てしまっているんですよね。メタ・メッセージとでも言うのでしょうか。時間で働いているから、客なんかさっさと帰らせてできるだけ楽な方がいいわということなんでしょうけど。

 

確かに経済的には合理的なんですけど、みんなが経済合理性を追求しすぎると、居場所なんてものはなくなってしまうのかもしれません。